第3回 成人式で馬券初体験

第3回 成人式で馬券初体験

5月 27, 17
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競馬との出合いの原点が父に連れて行かれた川崎競馬場とすれば、次の接点は成人の日の出来事にちがいありません。

当時私は同じ川崎市でも府中に近い登戸に住んでいて、高校生のころから府中の中河原、多摩川沿いにある今は「サクラサンリバー」というスーパーマーケットに買い物に行ったり、その店の二階にあるボーリング場へ遊びに行ったりしていました。そのころ知り合ったK君と成人式の会場でばったり再会しました。スポーツマンタイプの彼は、日焼けした顔に真っ白な葉が輝いて、爽やかなその笑顔が私とおない年なのに大人びていて、声をかけられたときは思わず胸がときめき、目が点になってしましました。そのK君がいきなり「式が終わったら一緒に遊びにいかない?」と声をかけてきたときは、考える間もなく「うん」とうなずいていました。もう胸が一杯で、式の最中もボーっとしていて、いったい誰がどんな話をしたのかなんてひとつも覚えていません。

そしていよいよ成人式の式典のあと、K君が連れて行ってくれたのは……、なんと府中競馬場だったのです。当時はまだ競馬場に来る女性というのはめったにいなくて、そこへ近所のお姉さんからの借り物とはいえ振り袖姿の正装した娘が登場したのだから、おじさんたちは一斉にピーピーと口笛をならし、「ネーチャン」と囃し立てます。私もK君も思わず真っ赤になって俯いてしまいました。でもそのお陰で、かえってさっきまでの気恥ずかしさはなくなり、K君と昔のように普通におしゃべりできるようになりました。K君に教えてもらって、生まれて初めて馬券も買いました。そしてレースを見ているうちに、フッと父と一緒に競馬場へ来ているような気がして、懐かしいようなやるせないような思いに駆られたものでした。

その日のレースもK君のことも、今では遠い記憶のかなたにおしやられてしまたけれど、成人式という人生の節目の日に初めて馬券を買うという偶然は、私がいつか競馬の仕事に進むことになるという伏線だったのでしょうか。

そして今、私がなぜか「サクラ」の名前のついた競走馬が理屈ぬきで好きになってしまうのも、後に知ったことですが、私が通っていた府中の「サクラサンリバー」のオーナーが「サクラバクシンオー」「サクラチトセオー」「サクラローレル」などの競走馬のオーナーだったという偶然も、なにか運命的なものに思えるのははたして考えすぎでしょうか。

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