第14回 さあ本番開始「朝ちゃんに乗りたい!」

第14回 さあ本番開始「朝ちゃんに乗りたい!」

5月 27, 17
a
no comments

いよいよ競馬キャスターとしての腕の見せ所。4月17日からの放送は朝10時から夕方の5時45分まで、8時間の超生ワイド番組です。

「朝ちゃんに乗りたい」コーナーは朝10時40分から11時までの間の、5分から10分間で、競馬や馬の話をしてから、その日買うレース名を3レース発表して、愛川さんのポケットマネー1万円と局から1万円を貰います。そして愛川さんが視聴者からのお便りを読みます。締めは愛川さんの火打ち3回に、「いってらっしゃい、がんばってね」の声で送り出してもらうのです。

さてこのお金の行方です。愛川さんから預かった1万円分の配当金は愛川さんに返します。局からの1万円はその配当金を毎週いただくはがきの中から1名さまにプレゼントするのです。もし3レースともはずれたら、残念賞として文化放送のテレカです。

私はこの「朝ちゃんに乗りたい」コーナーにはがきが1枚もこなかったらどうしようと思いましたが、毎週何百通もいただいて本当に嬉しかったのです。

そしてお昼の予想の時間は競馬場のゴンドラ席といわれる放送席からの生中継でその日のレポートも交えながらメインレースを含む3レースを予想するのです。このときはスポーツ部の競馬中継もやっている長谷川太アナウンサー(通称のび太さん、漫画「ドラえもん」に出てくるのび太さんそっくりで、プロ野球、サッカー、マラソン、ラグビーなどの実況中継のベテラン花形アナウンサー)と一緒です。

長谷川さんにはずいぶんお世話になりました。番組が始まって1カ月間というもの緊張のあまり食事がまったくのどを通らなかった私を見て、言ってくれたのです。

「森さん、食事をちゃんととらないと身体がもちませんよ。これから長いんですから。かっこんででも、一口でも食べるようにしましょうよ。ぼくも一緒に食べるようにしますから」(やさしいんだなあ、これが)。

こうして一緒にお昼ごはんを食べてくれるようになったのです。そして競馬のことだけでなく、いろんな放送のコツを教えてもらいました。

私の出番は12時45分から58分、まずことに12時50分からは特別なことがない限り、第6レースをやってることが多いのです。初めのころはそのレースのゴール寸前にスタジオから呼びかけられると、ワーワーという大歓声の中で話さなければならず、それに負けずに大声でどなりながらしゃべり返していたので、もともと地声の大きな私は隣の放送局のオンエアーの中にも私の声が入ってしまって、スタッフが平謝りに謝っていたことなど知るよしもありません。また馬の名前を言い間違えたり、1着、2着を1位、2位と言ってしまいました。このときいつも時間がなくなって時報(ちょうど1時)になってしまうこともあります。すると私は自分の予想を時報内に入れたいと焦り、早口がいっそう早くなってしまい、何が何だか分からなくなってしまうのです。ふだんから早口なのに、特に気持ちがのってくるとどんどん早口になっちゃうんです。以前所属していたプロダクションの社長はインテリ風に見えて実は大の競馬ファン。私の早口の放送を聞いてくれて「また気持ちがのってきたな。おもしろいけど言っていることがわからなくなるんじゃないかと、ハラハラ、ドキドキしながら聞いていたよ」と言われました。とにかくせっかく予想したんだし、自分の話も全部聞いてもらいたいと思う一心で、早口放送となり、そんな日はスタジオに戻ると、愛川さんに温かく注意をされました。

そして午後3時台、メインレースの10分位前にいつも呼ばれ、そのときはそれまで私の買った2レースの結果とこれから行われるメインレースのオッズや、パドックで馬を見てどうだったかを伝えて、実況に入るのです。しかしこのメインの前のスタジオからの呼び出しに応える私の第一声の調子で、スタジオでは当たりはずれが分かるそうです。私はなるべく分からないように普通にやろうとするのですが。

実況中継が終わると、一日の結果をもって急いでスタジオへと戻ります。往復はもちろん電車です。だから行きも帰りも、ファンの様子や馬の人気などいろいろ生の情報がレポートできるのです。1レースでも当たったときや、全部的中したときは足取りも軽やか。全部はすしたときはこのまま家に帰りたいという気持ちになり、スタジオの扉を開けるのがとてもいやでいやでたまりませんでした。だって当たったときは、「よかったね、おめでとう。きょうは何分でも話してもいいよ。好きなこと言っていいよ」って、その日の最後の放送時間を私にくれるのですが、初めて全部はずしたときは、プロデューサーが扉の外で待っていて、「きょうは全部はずしてすいません。来週がんばります、で終わってくれ」と言われ、まったく意気消沈(情けないぞ、朝子)。

それ以来私は、帰りはまっすぐにスタジオに寄らずに一緒に出演している報道部の野中直子さんや、交通情報の夕佳ネエサンのところでお茶を一杯飲んでからスタジオに入るようにしました。この2人はどんな時でも「朝ちゃん、おかえり。ごくろうさま」と明るい笑顔で迎えてくれました。放送の中でこの3人は「行かず後家」で通ってしまって、それぞれ番組の中でお見合い相手を募集したり、3人それぞれ対抗意識を燃やしながら、放送を楽しんでいました(こんないい女を3人もほっとくなんて、世の男どもの眼はどうなっているのかねえ)。

leave A Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です