今だから言いますが、父に競馬場に連れて行かれた子ども時代の私の夢は女優さんになること。もちろんきれいな衣装を身に付けて、ファンに囲まれたいという望みもありました。けれど、生意気なようですが、私はいろんな場面で、いろんなキャラクターを表現できる俳優、アクトレスという職業に無性にひかれていたのです。
子ども時代の夢を再び思い起こした私は、すぐに、昔の知り合いのテレビ局のプロデューサーを訪ね、女優をめざすにあたっての心構えや勉強方法、俳優の養成所のことなどについて相談してみました。
「女優やタレントになるのはそんなに簡単なことではないよ。それより結婚して幸せな奥さんになるほうがいいんじゃないのかい」
その人の第一声でした。しかしそう簡単に引き下がる私ではありません。
「もう自分で決めてしまったんです。辛いことには慣れっこですから、がんばる覚悟はできています」
と食い下がる朝ちゃん。
その勢いにはさすがのプロデューサーもちょっとびっくりしたようです。しかしそれでタレントセンターと劇団の俳優養成所を紹介してもらうことができました。
こうして夢中で勉強して、タレントセンターと俳優養成所を無事卒業。それからはテレビやイベントの仕事も少しずつ入るようになり、川崎では遠くて不便なので、新宿に引っ越してきました。入居してからわかったことですが、そこは新宿の場外馬券売場(ウインズ新宿)に歩いて行けるすぐ近く。これも亡き父の導きか、としおらしく言いたいところなんですが、これが悪かったんですよ。
そんなとき、新宿コマ劇場のお仕事が決まりました。大舞台でのお仕事はこれが初めてで、新宿に移り住んだ早々に新宿でのお仕事がくるなんて、なんてラッキー! と嬉しく興奮してしまったのを昨日のことのように思い出します。
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